COCOON〜月の翳りと星ひとつ〜観劇感想
5月15日のマチネ、星ひとつから観劇してきた。
一言言わせてください。
末満さん、ありがとうございます…!
私は『TRUMP』でウルがとても好きだったのでいやそりゃもう泣くよね
私たちが見てきた『TRUMP』は、ソフィ・アンダーソンの始まりの物語であるし、同時に絶望の物語だった。
今回の星ひとつは『TRUMP』の言わば裏舞台の話。ソフィとウルの物語。ウル視点から見たTRUMP。
ウルにとっての掴みたい星はソフィ。たったひとつの星だったけれど、ウル亡き後ソフィにとっての星ひとつはウルになるっていうなんていう皮肉なんだろう。
ウル亡き後、「ウル」と名付けた薬を作り、ウルの理想のように共同幻想のクランを作り、永遠に枯れない花を求めたソフィを知っていればなお皮肉に感じる。
『マリーゴールド』での、イニシアチブで演じさせていたウルを傍に置いていたソフィを思い出し、救われないなと思った。
誰にも星ひとつはある。
ウルにとってのソフィ、ソフィにとってのウル、そして、トランプにとってのアレン。
トランプはアレンという星を掴めず、ソフィを掴む。
ソフィはウルという星を掴めず、リリーを掴む。
あれだけトランプを憎んでいたのに、けっきょくソフィはトランプと似たようなことをしてしまったのだなと。
そして今作で1番救いだと感じたところは、やはりダリがウルを希望と言ったところ。
ダリが「ウルの死は希望だから、誰にも嘆かせたりはしない」(たぶんこんな感じのこと言ってた)と言っていたことが、ぐっときた。
それソフィにも言ってよお願いダリちゃん……!
絶望でしかなかった『TRUMP』が見方を変えると希望に変わるのがもうエモすぎて、これが救いでなくてなんと言う?
このウルがもたらした希望が、いつかソフィにも希望をもたらしますように。
そして16日マチネ、月の翳りを観劇。
いやもう、ほんとにすごくて言葉を失った。
末満さんの言葉通り、易しい内容では全くない。星ひとつは希望だったのに、月の翳りは絶望のさらに絶望って感じで。
月の翳りは、それぞれの繭期の話。繭期の中の友情の話。
ラファエロとアンジェリコ。ディエゴとジュリオとエミール。ドナテルロとグスタフ。
いやもう末満さんが憎い笑
甘えん坊のラファエロと泣き虫のアンジェリコ。体は成長しても少年らしく、やはり本質は全く変わっていなかったのだ。
容姿や格好は親のダリとゲルハルトにそっくりなのに、ラファエロはダリとは全く違う内面。逆にアンジェリコはゲルハルトと似たところがあるのに、実は血が繋がっていない。
この対比ずるくない?むりじゃんこんなん。むりだよむり。
二人の間には確かに友情は存在したのに、流した血が本当に友情を流してしまったのだなぁ。
最後の大量の赤い花弁が慟哭するアンジェリコに降り注いだのは、友情が流れてしまった描写なのではと今気づく…。
カーテンコール、ラファエロはアンジェリコを見てからはけていくのに、アンジェリコはラファエロの方を一切見ない。もう辛くてたまらなかった。これもう『TRUMP』をどういう目で見ればいいんだ。
アンジェリコは自分の孤独を埋める唯一の友を求め、ラファエロに固執するようになったけれど、ラファエロは自分を選ばず、ウルを選んだことが悲しくてたまらない。
ここからラファエロのウル絶対守るマンになっていくんだなぁと。
でも1番の皮肉って、アンジェリコが理想とする強いラファエロになったはずなのに、そのラファエロはアンジェリコを選ばないってことなんだよな
アンジェリコの星ひとつはラファエロなのに、決して掴むことは出来ないし、トランプにとってのアレンやソフィにとってのウルみたいじゃなくて、傍にいたのに掴むことが出来ない
逆にラファエロは自分を見て欲しいと願うし、アンジェリコと抱き合った時、少なくとも自分を理解して欲しいと思ったはず。アンジェリコを友人として認めていたのに、そのアンジェリコが求めるのは理想のラファエロなんだから、自分を見てはくれない。
ラファエロにとって自分をさらけ出したのは初めてであろうに、ラファエロにそれは君ではないと否定されたことが、きっとラファエロの中でアンジェリコという友人が死んでしまった、友情が流れてしまった時なんだと思う。
このラファエロとアンジェリコが、それぞれ求めてることがすれ違いすぎて、お互いが唯一無二の存在のはずなのに、悲しいよ…
アンジェリコ自身、狂い始めたのがダンピールのディエゴのせい、ウルのせいだと思ってて。アンジェリコが、ダンピールを蔑む理由がわかった。『TRUMP』でウルがダンピールだと告げたその時、笑いながら彼は何を思っていたのだろう。ラファエロが選んだのがよりにもよってダンピール。その時の彼の気持ちを考えるとやるせない。
そしてライネス流れるタイミング、あまりにも、卑怯、、、
ラファエロのこの選択から、アンジェリコが狂い、ラファエロ自身も破滅の道に進んでいくから…。いややるせねぇな……。
けっこう好印象だったディエゴ。いやほんと真実知った時鳥肌だった。
何故彼は自由を求め、自由ではなかったのか。
嘘という檻に縛られるディエゴと、宿命に縛られるラファエロは確かに似ている。
繭期という理想に縛られるドナテルロが、ディエゴを求めたのも納得がいく。
TRUMPシリーズでは求めたものは手に届かず、別のものを代替品とするのってけっこうあってめちゃくちゃおのれ末満って感じ。
トランプがアレンを求めてソフィを手にしたことも、ソフィがウルを求めてリリーを手にしたことも、ドナテルロがグスタフを求めてディエゴを手にしたこともアンジェリコがラファエロを求めてオトモダチを増やしたこともみーーーーーんなそう……
星ってそういえばたくさんあるよなあ!そうだよなあ!でも自分にとっての星ひとつは手に入らない…おのれ末満……
ディエゴがソフィと関わり持っていたのも鳥肌…
またしてもそういう繋がりはってくるーーーー憎らしいーーー!!!!
月の翳りはいろんな対比の表現があって、面白いけどすこぶる胃に優しくない…。
大人になって変わったグスタフと繭期という少年時代の幻想に囚われ続けるドナテルロとか、それこそダリ・ゲルハルトとラファエロ・アンジェリコとか、、、
そしてラファエロとアンジェリコ。1番ショックの大きい対比は実は自分はこれだと思ってて。
正当な後継者のラファエロ。繭期の症状も酷く、全てを投げ出してしまいたいと思っている。ダンピールの義弟ウルを守りたいと思っている。
正当な後継者ではないアンジェリコ。繭期の症状はあまり酷くなく、立派な後継者になりたいと思っている。ダンピールを嫌悪し、実弟のウルを憎んでいる。
そして、ラファエロよりも精神面が大人だったアンジェリコ。ラファエロは自分の運命を選び進んでいくのに対して、アンジェリコは友に固執し続け停滞し狂い始めていく。そしてその道はもう決して交わることはない。
成長するラファエロと停滞するアンジェリコは、成長したグスタフと過去に固執したドナテルロにも似ている。
ここでも対比…。
もう探せばきりのないくらいの対比オンパレードで、しかもその対比がどれもえぐいえぐい……。
(パンフもそう思えば表も袋とじの裏で対比だよな……)
パンフのダリの詩に愛の呪いってあったけど……ラファエロはダリに全く似てないのにウルを愛するという愛の呪いだけ受け継がれてるの皮肉すぎて天仰いだ……。
しかもそのウルへの愛は本人に微塵も伝わらず、ラファエロ自身は報われない。辛い。
いやもう1億回言うけどアンジェリコはまんまお父上に似てるのに血の繋がり全くないし、実弟ウルを疎ましく思う⇔ダリちゃんとは似てないのに正当な後継者であり、義弟ウルを愛し守ろうとするって対比。
なんだこれ?吐きそう。吐く。
つまり相関図、
は????むり……
星はたくさんあるよなあ!でも自分の星ひとつが掴めないのどうにかして!
誰かの星は誰かの星の輝きを鈍くして、星を掴みたい月を翳らせてるくそえぐ図だよ……。
繭期の中の友情の話だったはずなのに、友情って……なんだ……?ってなる…。えぐいなぁ……。
でもめちゃくちゃやるせないけど、私は今回の公演すごく好き。
月の翳りもう1回見てぇなぁ……
余談だけど、細貝圭のドナテルロえっちすぎない?オタクみんな好きじゃん。
あと個人的にジュリオめっちゃすこ。かわいい。ボクちゃんかわいい。ヒラ袖かわいい。
・短編アンジェリコを待ちながら
読んでさらに絶望。
ラファエロが自分自身を確立し、アンジェリコの理想の彼となっていくように、アンジェリコ自身もつり合うように貴族らしい自分として努力していたんだね。
きっと将来は血盟議会に入って、ダリとゲルハルトのようになりたいと思っていたはず。
自分を選ばなかったラファエロに悲しさと憎しみを抱えながらも、きっと、きっと、と思い続けていたんだと思う。
『TRUMP』では悪者キャラのようにしか描写されなかったアンジェリコだけど、短編を読んだ後の彼の印象が変わる。
立派に貴族らしく、ゲルハルトのようにひたすら努力をしていた人なんだな。
……ウルがクランに来て、ソフィが現れるまでは。
理想のラファエロになったはずなのにアンジェリコの孤独は埋められず、2人で貴族社会を率いていくっていう理想すら叶わず、泣きながら灰になるの辛すぎて吐きそう。
アンジェリコ幸せにしたいむり……